触れないで、杏里先輩!

逃げたいのに、身体が硬直して動いてくれない。

そしてすぐにやっぱり震えまで始まって。


「触れないで!」


今、触られたら、絶対倒れる!

や、やだ……っ!




「やめろ」

「いてぇ!」


真っ暗闇の中、低い声が二つ聞こえた。

一つは背筋を凍りつかせそうな声。
一つは痛みを感じている悲鳴のような呻き声。