触れないで、杏里先輩!

「そうよね、ごめん!頑張れ、美桜!もうチャイム鳴るから席に着こうか」

「うん」


初めての克服レッスン。
他人からみたら、おちゃのこさいさいなことかもしれない。

でも私には大きな一歩だ。

教室に入ると何故か私を皆見ている気がした。

防護壁が無くなってしまったせいで、視界が広くなったせいかもしれない。

私は俯きながら早足で自分の席へと向かう。


「坂井さん……あのさ……」

席に腰掛けると、突然近くから私を呼ぶ遠慮がちな低い声。

驚いて私は横へと顔を向ける。
こちらを向いている隣の席に座る男子。

私はやっぱり怖くなって、すぐに机に顔を戻してしまったが考える。