触れないで、杏里先輩!

助けを求めたのに亜季ちゃんは私に向かって両手拳を握りしめ、エールを送るように笑顔を向けてきた。

裏切り者ーーーっ!


杏里先輩は私のブレザーを引っ張りながら教室を出ると、すぐ横の階段に向かって行く。
下に降りるかと思ったら、杏里先輩は何故か誰も居ない屋上への階段を上っていって。

屋上は危険だからと常に施錠されている。
だからこの先は行き止まりで誰も行かない。

そんな所で一緒にご飯を食べるの……?

絶対無理!!

一番上の階段に辿り着くとやっとブレザーの裾を離してくれて恐怖から少しだけ解放された。


「ゴールは美桜が男に触れても気絶しないところまで」

一番上の階段に腰を下ろした杏里先輩が言った。
私は右手でお弁当を抱え、額を左手で隠して突っ立ったままだ。

「だって男に触れただけで気絶してたら大変だ。身を守ることすら出来ないよ。とりあえずそんな警戒しないで座って食べよう」

優しく目尻を下げて微笑む杏里先輩。