触れないで、杏里先輩！

「どうしたんですか？」

亜季ちゃんが気になったようで訊ねた。

「教室で大分騒いだから勘づいてる人もいるだろうし、クラスに美桜の男性恐怖症の話をした方が良いかもって。だって今の美桜を見たら男子が騒ぐでしょ。しかも触れただけで気絶しちゃうんだから」

「ですね！美少女だもん！」

だから止めて下さい、亜季ちゃん。

「美桜、話して良い？美桜を守るために。ふざけて触られないように釘を刺しときたい」

確かに、話した方が良いかもしれない。
自分でも男子に触れられただけで気絶するなんて今日初めて知ったもの。
おふざけで触られても、怖いし困る。

私は小さく頷いた。
杏里先輩はそれを確認すると、クルリと振り返る。

そのとき漸く気付いたが、教室に居た全員が私達を見ていた。