触れないで、杏里先輩!

「はい!おしまい!鏡でチェックする?」

どうやら終わったようだ。

「……良い。髪は帰ってこないから」

私は眉を顰めながら呟く。

「美桜、絶対そっちの方が良いから」

目尻を優しく下げて杏里先輩が私に微笑む。

その顔に心臓が跳び跳ねた。

杏里先輩は私の防護壁を破壊した憎き相手だが、私は恋愛経験ゼロで褒められる事に免疫力もない。
それに彼は整いすぎた顔をお持ちのイケメンだ。

そんな人に褒められて、ドキドキしない方がおかしい。
だって目の前の亜季ちゃんは蕩けているし。


「うーん、どうしようかな……」

突然杏里先輩が私を見ながら唸り始めた。
ドキドキしていた私だったが、視線が次第に怖くなり、視線を外して逃げた。