杏里先輩の髪へと向かっている私の手は震えている。

なんとか杏里先輩の髪まで1センチ。

フゥーと息を吐くと人差し指と親指で髪を挟んで掴んだ。


あれ、

ふわふわして、

すごい柔らかくて、

もっと触りたくなる……

クセになる……

長い毛のわんちゃんに触っているみたい……

あぁ、気持ち良い〜……

ほわんと気の抜けた顔になった時、視線を感じて下へと視線を向ける。

目を瞑っているはずの杏里先輩とバチっと目が合った。

その瞬間、心臓が痛いくらい暴れ出す。

咄嗟に手を離すと自分の顔の横まで持っていった。


「早いよ」

呆れた顔の杏里先輩。