「そうだ、そろそろ美桜が俺の髪触るのってどう?」

「えっ!!?」

困惑しているというのに、杏里先輩が更に困惑させる提案を投下してきた。
驚きすぎた私は思わず声を張り上げた。

「結構慣れてきたし、夏は肌が出るから美桜を早く治してあげたい。急かしたいわけじゃないけど出来れば夏休み前までには。次のステップに進もう」

私が杏里先輩に触れるの!?

「はい。じゃあ頑張ろ」

困惑している私を余所目に杏里先輩は僅かに首を曲げると私に頭を向けた。


はい、いつもの逃げられないパターン入りました。


私は観念して椅子に真っ直ぐ座っていた体勢から横向きにし、上半身を捻って杏里先輩へと向いた。

じっとこちらを見つめる視線を感じる。

「目瞑ってもらえませんか!?」

「仕方ないね」

目を閉じてくれたが、まだまだ動悸は激しい。

やらないと杏里先輩は終わらせてくれない。
それに逃げていたら変わらない。

進め、私!

心を決めて右手を動かした。