触れないで、杏里先輩!

『キーンコーンカーンコーン……』

呆然としてしまったところにチャイムが鳴り響く。
目の前の笑顔だった杏里先輩は眉を下げて残念そうな顔を作った。

「チャイムに邪魔されちゃったな。美桜、またね」

杏里先輩はにこやかに言うと私に背を向けて廊下の向こうへっと歩いていく。

私は呆然としたまま。

だって未だに意味が分からない。

王子な杏里先輩が好きだとは言っていないが、地味子な私と本気の恋が出来ると言っていたわけで。

自分で言うのもなんだが、杏里先輩の思考回路、理解不能。


「杏里先輩、本気みたいよ」


近くからボソッと聞こえたその声に我に返った。
ハッと横を見ると、そこには呆然とした顔の亜季ちゃん。

私は固まってしまった。