「杏里先輩って、髪結べるんですか!?」

大事なことに気付いた。

「妹がいて、たまにやらされてる」

「妹さんいたんですね」

「この治療法、良いかもね」

私の髪を持ち上げながら杏里先輩が言った。

全然良くない。

ドキドキしすぎて胸が苦しい。


「美桜って頸《うなじ》が綺麗」

突然の杏里先輩の一言に、バッと反射的に頸を両手で隠すと振り返る。

「変なところ、見ないで下さい!」

「つい目がいっちゃった。それより突然隠すから俺の手に触れそうだった。危ない危ない」

焦った顔をしている杏里先輩は両手を上げている。
咄嗟に髪から手を離してくれたらしい。