触れないで、杏里先輩!

「あの、杏里先輩、あの門の手前の坂道で転けて頭を強打しました……?」

私は目を見開いたまま訊ねた。

だって絶対におかしい。
別世界の人間が私に交際を申し込んでくるなんて。

「いや、転けて無いけど」

それなのに笑顔で返された。

「でも私達、さっき初めて喋ったじゃないですか。突然、付き合おうと、言われましても……」

「そうだね」

笑顔でそうだねって、この人と話していると随所随所で力が抜ける。

「私の事、好きじゃ、無いですよね?」

付き合ってとは言われた。
でも好きとは言われていない。

「美桜となら本気の恋が出来ると思ったんだよ」

は?
本気の恋?

「だから俺の彼女になって下さい」

……は?