触れないで、杏里先輩!

「オドオドさが減ってきた」

その言葉にちょっと嬉しくなった。
杏里先輩のお陰で男の人に慣れてきたようだ。

「きっと杏里先輩の治療のお陰かと」

北川君にそう言うと彼は目を見開いた。

「あのさ、杏里先輩といつも何をしてるの?」

じいっと目を見られて訊かれて、思わず目を逸らした。

「髪に触れて慣れさせているるの」

「俺も協力したい」

まさかの言葉に逸らした目を戻した。

「だって俺も坂井さんの力になりたい」

真摯な瞳を向けられた。

彼は善意で言ってくれた。

でも、

「ご、ごめんなさいっ!杏里先輩でいっぱいいっぱいだから!でもお気持ちは嬉しいです!」

頭を下げて北川君を不快にさせないように努めながらお断りした。

「そっか。大丈夫。分かってたから」

「え?」