触れないで、杏里先輩!

「初恋の人が忘れられないんだって最初は断られたんだけど、私が何度も付き合ってって言い続けて押し切ったの」

更にまさかのカミングアウトだが、気になった。

杏里先輩には忘れられない初恋の人がいるということが。


「結局振られちゃったんだけど、私まだ杏里君のこと諦めてないから」

その会話に反応出来なくてただ立っていたら、ぽんと両肩に手が乗り、笑顔の彼女は私の顔を覗き込んだ。

「はい、完成。お互い初恋の人に勝てるように頑張ろうね」

否定したのにまた言われた。

「だから違います」

「私が先輩だからって、遠慮しなくて良いんだよ?」

「遠慮なんてしてませんから!」

「そっか、そうなんだ……」

漸く私の言葉を信じてくれたようで、彼女は安堵したのか、ふにゃりと力の抜けた笑顔を見せた。
その顔に同じ女だが不覚にもキュンとしてしまった。