触れないで、杏里先輩!

顔を向けるとそこには私よりも五センチ程背の高い、髪は少し色素が薄くてふわふわしているミディアムボブ、お目めはぱっちり二重で、声の通りに可愛らしい女子生徒。


「かすみ!?」

この人が『かすみ』さんらしい。


「髪の毛引っ張るの、暴力じゃないかな」

声は可愛らしいが、目と言葉には気迫さを感じられた。

すぐに私の髪は痛みから解放されると、三人の女子生徒は何も言わずに走り去って行った。


「私のせいだね。ごめんね。さっきの子達にはもう一度言っておくから」

「え?」

呆然としていたら、かすみさんに謝られた。

「痛くなかった?」

かすみさんは眉を申し訳なさそうに下げ、長い睫毛に縁取られた大きな瞳を私に向ける。

「大丈夫です!それに貴女のせいではないですから!助けて頂き助かりました!では失礼します!」

私は助けて貰ったことに気付いて、頭を下げてお礼を伝えて立ち去ろうとした。