触れないで、杏里先輩！

その日はモヤモヤしながら過ごしていた。
お昼もそのせいで杏里先輩から「悩み事でもあるの？」と言われて誤魔化した。
五限目が体育のお陰で私はいつもより早く杏里先輩と別れた。

体育は五組と合同だ。
女子は六組の私のクラスで着替えている。
教室に亜季ちゃんはいなかった。
体操服に着替えると私は運動場へ向かうために階段へと向かう。

三階の階段の踊り場で、突然誰かに腕を掴まれた。

ゾワッとして反射的に振り返った。

そこには知らない女生徒。
私の腕を掴んでいる人と後ろに二人。

私の腕を掴んでいる女子が不愉快そうに顔を顰めると言った。

「こんな子が杏里君が夢中な子なの？」

「ただのチビじゃん」

次に後ろの女子左。

「何が良いのか分かんないね」

次に後ろの女子右。


こんな風に女子に捕まったこともなく、私はポカンと他人事のように様子を見ていた。