触れないで、杏里先輩!

「あんな防護壁って言ってた髪を結んで来れたのは前進してるね」

杏里先輩の感心した言葉に勝手に切られたことを思い出した。

「前髪が一番の防護壁でしたからね。私、まだ恨んでますよ」

苛々が蘇り、ジト目で杏里先輩を睨んだが、見るんじゃなかったと後悔した。


「絶対そっちの方が可愛いから」

柔らかく微笑みながら、殺し文句。

心臓が暴走する。


「俺の役目も終わりが近いな」

笑顔で放たれたその言葉を聞いた瞬間、心臓は急激に速度を緩め暴走が止まった。


そうか、私が克服すれば杏里先輩は今みたいに私の相手をする必要が無くなる。

もし私が男性に触れる日が来たら、杏里先輩は今みたいに会いに来ることは無くなるの……?