触れないで、杏里先輩!

北川君から警戒心が消えた気がする。
だって笑ってるもん。

それから二人は玄関前まで私の知らない宮下先輩話で真ん中にいる私が邪魔なのではと思うくらい盛り上がっていた。

なんだこの二人、仲良く出来るじゃない。


「今日は凄く仲良しさんでしたね」

昇降口前、北川君を見送ると杏里先輩に言った。

「北川君を威嚇しても仕方ないからね」

威嚇?どういうこと?

「それより、どうして髪を結んできたの?」

疑問を解く前に飛んできた質問にドクっと心臓が飛び跳ねる。

「あ、暑いからです」

「本当に?」

見透かしたような青い瞳に気まずさを覚えて、思わず目を逸らした。

「は、はい」

声が上擦りかけた。