触れないで、杏里先輩!

今日も私の脳は正常に動いてくれない。

私を見たままの杏里先輩は更に目尻を下げた。

だから貴方、簡単に可愛いって言わないで。

「お、おはようございます。ありがとうございます……」

頬の熱が引いてくれなくて、誤魔化すように日傘を差した。

「北川君、おはよう」

杏里先輩が北川君に挨拶をかけた。
北川君も「おはようございます」と返した。

そういえば昨日杏里先輩が北川君と仲良くすると言ってはいたが、今日もきっと昨日と同じだろう。

だって相性はあるから。
昨日は杏里先輩に押されて言えなかったけれど、仲良くはして欲しいけれど無理に合わせなくて良いとちゃんと伝えよう。

先程とは違う緊張感を胸に私は歩き出した。

私の左を北川君、右を杏里先輩が陣取った。

三人横に並んで歩けない道ならば良かったのに、と広すぎる歩道を恨めしく思った。


「北川君はもうすぐバスケ部、練習試合じゃない?」