触れないで、杏里先輩!

次の日の朝。

久々にこんな長い時間、鏡の前に立った。
久々に髪を結んだから、かなり時間を要したせいもある。

最後に左横に杏里先輩に貰った桜のピンを着ける。
あの日からお守りになっている。

鏡に映る私の今日の髪型はポニーテール。
昨日の杏里先輩対策だ。

久々だったからヘアゴムを見つけるのにも苦労した。
やっと見つけたのは百均で買っただろう紺色のヘアゴム。

首の後ろがスカスカして涼しいのは利点だが、三年以上結んでいなかったからスカスカしすぎて心許なさを感じる。


「おはーー……美桜!?ポニーテールなんていつ振り!?」

リビングに行くと三年以上振りのポニーテールにお母さんが目を全開にさせて驚いた。


「おはよ……坂井さんが結んでるの初めて見た」

そして朝の電車内、座席の端に座る私を見た瞬間、北川君が目を見開いた。


「お、おはよう、き、北川君。あ、暑さ対策に」

いつもと違う自分にも恥ずかしさを感じて、今日もしどろもどろになる。