触れないで、杏里先輩!

「……なんか、今日の杏里先輩、おかしい……」

思わず口に出した。


「そうかな?」

机に片肘をついて手の平に頬を乗せて、ニコッとしながら私を見ているが、何かが違うように見える。


「まぁ、髪に触る治療は続けていこう。効果がみえたからね」

じいっと青い瞳を見つめて杏里先輩を探っていたら、杏里先輩が何事もなく言った。

流された気もするが、先程の話をぶり返されたら嫌なので、今は気にしないことにした。

「じゃあそのまま目を開けたままね。触れるよ?」

そう言って私に躊躇なく伸びてきた杏里先輩の長い指。

目を開いたまま、見れるようにはなった。

だけど私の心臓はバクンバクン大音量。

「大丈夫?気絶しそうだったら言ってね」

目の前の杏里先輩の言葉も掻き消されそうな程だ。

でも杏里先輩は余裕そうに私の髪に触れながら、私の様子を窺っている。

何故かは分からないが、複雑な気持ちになった。