何故かは分からないけれど、今はそんな気分になれない。

一人になりたい。

でも口には出せなくて、私は静かに自席に腰を下ろした。
杏里先輩もいつもの固定席の私の前に座った。


「目を見て話そうよ」

「でも私、先輩の目、既に見て話せますよ?」

長い時間は無理だが、杏里先輩の目を見るのは初日から出来ている。

「ずっと見てるの。絶対逸らしちゃダメ。はい、スタート」

「え、あ、え?」

突然の掛け声に目をいつもより瞬かせて戸惑う。

「始まってるからね」

杏里先輩は私の机に頬杖をついて私を見たままニコッと微笑んで念を押した。

「ねぇ、美桜」

「は、はい?」