触れないで、杏里先輩!

「旋風が映ってる。流石に顔上げてよ」

またいつの間にか俯いていた顔を、早く終わらせて欲しくて勢いよく上げる。

「あ、上げましたっ!」

「美桜は目を瞑ったままなの?」

だって目を開けたら携帯の画面に私達の顔が映っているわけで。
私達の距離感を再認識したら、倒れるかもしれない。
心臓は痛みを感じるほどの爆音を出している。

これ以上は無理ですよ!
どうしてこのタイミングで意地悪するの!?

「あ、杏里先輩っ、これ以上は、む、無理ですっ!は、早くっ!」

杏里先輩に苛立ちを感じながら、限界が近いことを必死に訴えた。

「分かったよ」

杏里先輩の返事に少しだけホッとし、目を瞑ったまま待つ。


『カシャ』

すぐに聞こえてきてくれたシャッター音。