触れないで、杏里先輩!

「でも目を開かないと、写真撮れないよ」

ずっと目を瞑ったままの私を笑っている杏里先輩。

「あ、杏里先輩が、撮ってもらえますか!?」

緊張のしすぎで声が裏返りながらも杏里先輩に託した。
だって目すら開けられない私が写真を撮れるわけがない。

「良いよ。その勇気をかって、俺が撮ってあげる。携帯のロック外してよ」

意地悪で返ってくるかもしれないかと少し不安だったが、杏里先輩の了承に安心して息を吐くと、ずっと右手に持っていた携帯のロックを外す。

「お、お願い、しますっ!」

右隣の杏里先輩に携帯を両手で差し出した。
杏里先輩の顔は見れるはずもなく、携帯に焦点を合わせた。
クスッと笑い声がした後、携帯が抜き取られた。
それを確認すると再び目を瞑った。
すぐに聞こえてきた微かな衣擦れの音。
恐らく杏里先輩が携帯を構えた。
目を瞑っているせいなのか、小さな音にも心臓が変に反応する。

早く撮って!杏里先輩!

「じゃあ撮るよ?」

「お、お願いしますっ!」

なんでも良いから早くして!