触れないで、杏里先輩!

「へ?北川君?」

何で突然北川君?と小首を傾げる。

「朝、一緒に来てるでしょ」

先程より低い声のトーン。

その時、ハッとした。

杏里先輩が北川君の名前を出す度、不機嫌になる理由が分かった。
一週間、朝も早く登校して昼も帰りも私に時間を割いているのに、二回登下校しただけの違う男の子の方に気を許していると思ったからだ。

これは誤解を解かないと。
一週間私に付き合わせた杏里先輩に対して失礼だ。


「あ、杏里先輩、座って下さい!」

「え?」

「良いから!私の決心が揺らぐ前にお願いします!」

杏里先輩は突然荒げたような声を出す私が訳が分からないのだろう。
少し呆けた顔をしながらだが私の言う通りに椅子に座ってくれた。