触れないで、杏里先輩!

「……撮ります……お願いします」

欲望に負けました。

「えぇー、そんな嫌そうな顔で言われてもなー。笑顔の美桜とじゃないとヤダなー」

杏里先輩の要望を飲んだというのに、両肘を後ろの机に乗せながら無表情に棒読みのようなわざとらしい話し方をした。

今日の杏里先輩、意地悪すぎない!?

「私には崖からバンジージャンプするくらいのことなのにっ!」

思わず握り拳を作って、声を荒げてしまう。
お金のために利用するのだから、ただの逆ギレだ。
杏里先輩は全く悪くないのに。

「ごめんごめん。美桜には勇気が要ることだもんね」

杏里先輩は自分が悪いというように、眉を下げた。
その顔に罪悪感。

「美桜って、誰かと写真撮ったことある?」

杏里先輩が訊ねてきた。