「はい、目を開けて」
恐怖心と格闘している中、私の髪から杏里先輩が離れてくれたようだ。
その言葉にやっと安堵し、私は大きく息を吐いた。
恐らく十秒程の出来事。
私には何十分にも感じた。
未だに恐怖心を引き摺っている私は恐る恐る開けると、何故か目の前には私が居た。
驚くと同時にすぐに気付く。
自分が見えたのは鏡のせいだと。
「え、これ……」
でも何で杏里先輩が私に向かって鏡を向けているのだと考える前に、もう一つ気付いた。
鏡の中の私の髪、先程杏里先輩が触れていた私の左の耳の上に薄いピンク色の可愛らしい桜のヘアピンが着いていた。
「お守り」
「え?」



