触れないで、杏里先輩!

「触れたよ」

その声に左側の肩の上辺りの髪を触れられている感覚がする。
頭の天辺から足の指先まで、研ぎ澄まされたように緊張が走る。

「誰か来るまでずっとこのままで居ようか」

「む、無理ですっ!」

必死に返すと、目の前からは楽しそうなクスクス笑う声がするが、私は構う暇も余裕もない。

「ねぇ、美桜」

「何ですかっ!?」

そのせいだろう、声は無駄に大きくなる。

「俺はね、美桜のことを分かってるから大丈夫だけど、他の男にはこんなに気を許しちゃだめだよ?」

「勿論ですよっ!」

また必死に返すと、再び目の前からは笑っている声がしたが、

「それよりまだ終わらないんですか!?」

未だに髪を触られている感覚に耐えきれなくなった私は叫ぶ。