触れないで、杏里先輩!

「早く治したいでしょ?時間を無駄にしたら勿体無いし。さぁ座って。今日も頑張ろう」


というわけで、突然朝から試練が降りかかった。

私は震えながらも、心を決めて椅子に座る。

目の前には私の机に頬杖している私とは正反対の余裕そうな笑顔の杏里先輩。

近い距離に心臓が速度を上げていくと、杏里先輩が空いている右手を私へと伸ばしてきた。

まだ私との間は三十センチはある。

だがそれだけで怖くなって、反射的に私の身体が跳ね上がる。


「今日も目、瞑っとく?」

「瞑っときます!」

今日も私は杏里先輩の提案を受け入れる。

目を瞑ると私の心臓の音しか聞こえない。

いつ触れられるか分からなくて、身体が震えてきた。