「……行こうか」
お父様が空き缶を手に立ち上がり、私もそれにならった。
お父様は空をふと仰ぎ見て、そしてゆっくりと視線を地面に落とした。
頼りなげな街灯に照らし出された私たちの影を眺めて
「真夜中に男女が二人きりなのに、ね。
コーヒーを飲んでただお喋りって、まるで高校生のデートみたいだね」
「高校生だってもっとススんでます」
そう言ってやると
「まさか倭人のヤツ!朝都ちゃんを茂みに連れ込んで!」
お父様は顔を真っ青にさせてあわわ。
お父様……もう少しご自分の息子を信じてあげてください。
倭人はそこまでケダモノじゃありません。
呆れたように白い目で見ながら
「倭人とはコーヒー飲んでお喋りです。トラネコりょーたくんなら分からないけど」
「あはは、良かった~」
お父様はほっとため息。
「どんな想像してるんですか。
……まさかお父様…経験がおありで?」
さらに白い目でお父様を睨むと
「まさか!外ではないよ」
お父様は慌てて手を振って否定。
だけど“外で”と言う言葉に引っかかりを感じながらも私はそれをスルーした。
「朝都ちゃん」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げると
「抱きしめていい?」
お父様は三日月のように目を細めて口元に淡い微笑を浮かべながら私を見下ろしていた。
私はそっと両手を差し伸べた。
「はい」



