私はタバコの煙を深く吐き出しお父様に顔を向けた。
「楽しいお話ありがとうございます」
「…うん。僕も楽しかったよ」
お父様はわずかに眉を下げて私を見つめ返してくる。
「正直、僕は君の言葉に期待してた。家にあがることを
望んでいなかった、とは嘘になる」
お父様は正直に答えてくれて、私も口元に微笑を浮かべた。
「私もですよ。私も店長がタクシーを降りてくれるのを期待してました。
でもその先に待ってるのは
何も無いんです」
迷路の先にゴールはなく、ただ永遠に続く罪の道。
ミケネコお父様は僅かに俯き
「僕は君の中に紗依の面影を見つけようとしていた。
紗依はもうこの世のどこにも居ないのに。
ふいに彼女と同じ香りを纏った君を近くで感じて、気持ちが揺れた。
僕にはカズミちゃんと言う大切な人があり、君は僕の息子の恋人だ。
許された関係じゃない」
はっきりきっぱり言われても、私はどこかすっきりしていた。
「元、ですよ。元恋人」
冗談めかして笑う余裕すらできてきたのは、私の心の余裕ができたからだろうか―――
「君の言った通り何も無い。あるのは罪と、その罰を背負っていかなきゃいけない十字架。
歳だからかな~
思い切った行動が取れない。最後の最後になってブレーキを掛けるんだ」
お父様も苦笑いで頭の後ろに手を置き
「ブレーキを掛けてくれて良かった」



