Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)



「でも僕が……元々体の弱かった彼女に心労を負わせて


無理させて、まだ生きられる命を僕が縮めた―――


最近ふと考える。


紗依があのときフランス行きを断っていたら、彼女は今でも生きられたのか―――とね」


私はお父様の手に自分の手をそっと重ねた。


それはタクシーで一瞬だけ触れた体温より少しだけ低かった。


お父様はのろのろと顔を上げ、眉を下げて私を見てくる。


私は無言で首を横に振った。




「店長のせいじゃありません。サエさんは……たとえ決められた命が短くなろうと、あなたを愛することを決めて


凄く幸せだったと思います」





一度だけ倭人が見せてくれた。家族三人で写ってる写真。


お父様とサエさんは凄く幸せそうで、その写真を見つけた倭人も幸せそうで―――



「彼女が残した軌跡は未来の大きな幸せへと繋がったんです」



ゆっくりと言うとお父様は最初のうち目を開いていたものの、ゆっくりとまばたきをして


「ありがとう…やっぱり朝都ちゃんは凄いなー…


僕の方が年上なのに、君にはいつも大事なものが何か教えられる」


大事なもの―――


お父様は私の指をそっと握り返し、吸い終わったタバコの吸殻を空き缶に入れた。


「カズミちゃんと結婚が近づいてきてさー……考えてたんだよね。


僕は彼女を本当に幸せにできるのか―――って。


僕が彼女と結婚して、彼女は本当に幸せなのか。



また愛する人を失ったりとか……





もう嫌なんだ」