Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)



「あ…あの…お茶でも飲んで行きます?」


言ったあとになって後悔した。


何だかひどく安っぽい言葉に聞こえて、


これじゃさっきバーで店長を熱烈に慕っていたあの子と同じだよ。


僅かに俯くと


「じゃー、ちょっと歩こうか。自販機でコーヒーでも。缶コーヒーだけど」


ミケネコお父様は暗く広がる路地の方を指差し。


―――ガコンっ


自販機の中で缶コーヒーの落ちる機械的な音を聞いて、現実に戻った気がした。


「はい」


あったかいコーヒーを手渡されて、私はそのコーヒーを手の中で包んだ。


近くに公園があり―――



そこが以前黒猫と夜のお散歩に来た場所だと気づくのに、そう時間は掛からなかった。


二人で古びたベンチに座り、お父様はコーヒーの缶に口を付けながらタバコを取り出した。



「紗依とはじめて会ったのは二十歳のとき。僕が専門学生のときだった。


紗依は近くの女子大に通ってて、何度かバスで一緒になったんだ」



お父様は唐突に喋りだした。



バスの中での出会い―――


「ロマンチックですね」


微笑ましい光景を思い浮かべ、思わず微笑を浮かべるとお父様も頬を緩めた。


「ある日偶然近くに居合わせた紗依と二人席に相席になったんだ。


座ったときは何の下心もなかったけど、春先でねー…窓がちょっと開いてて


ふわって彼女の髪がなびいて香ってきたんだ。




ライラックの香りが」






それは文字通り思い出の香り―――



お父様にとっては生涯忘れることのない、



愛おしい香り。