「あ…はい。富山ですか……お酒を探しに…?出張ですか?」
なんでもないように振舞って当たり障りのない答えを返す。
「当たり~♪うちは洋酒がメインだったけど、お客さんの要望で日本酒も揃えて欲しいって」
はー、なるほど。
富山の地酒…想像しただけも涎が出そうだ。
「ブリに白えび、ホタルイカにかまぼこ。お米もおいしいし、いい場所ですよね」
考えたら黒猫の好きそうなものがいっぱい。
黒猫と旅行したら楽しそうだ。
ちょっと考えて私は首を振った。
「白えび食べたよ。甘くておいしかった。ブリもホタルイカも食べたけど、かまぼこは食べてないな」
ミケネコお父様はいつもの調子に戻ってにこにこ指を折って説明してくれる。
「え~いいな~」
大丈夫…
私たちの関係は―――店長と元従業員。元カレのお父様だし。
それ以下でもそれ以上でもない―――
「でも一番おいしかったのはサケといくらの親子丼
だったなー」
「親子丼♪へ~なるほど、確かに親子ですね」
何気なく返したけど…
親子丼…
へ??
お父様を思わず見上げると、
「お腹に入っちゃったら一緒だけどね」
お父様は意味深な流し目で私を見下ろしていて、
さっきより近づいた後部座席の距離…
少し車体が揺れると手が触れそうなその位置にドキリと心臓が鳴った。
このタクシーは一体どこまで走るの?



