Chat Noir -黒猫と私- バイオハザー度Max- Deux(2nd)



「昨日の……」


ミケネコお父様はテキーラの瓶を握り締め、私と向かい合っている。


その先を聞かれたらどうしようかと思ったけれど



「店長~!このカクテルこれで大丈夫ですかぁ?」



違うお客に作っていたカクテルが仕上がったのだろう。さっきの若い女の子が透明の液体が入ったタンブラーグラスを店長に突き出し、


「…ちょっと待って…」


ミケネコお父様は味見用の長いスプーンを手に取った。


正直―――助かった……


ミケネコお父様が本当は何を言いたかったのか分からないけれど、


きっと私はちゃんと答えられない気がした。


“大人”の顔をして何も知らないフリ―――それができればいいのに、たぶんそれだけは無理だ。


「うん、いいよ。これで出して」


ミケネコお父様は味見用のスプーンを水の入ったグラスに突っ込みGOサインを出したけれど


大胆にもそのスプーンを取り返し、自ら味見をする店員。


ちらりと私の方を見て、ペロリ…そのスプーンでカクテルを掬うと一飲み。


ぅわぁ。


客(私)の居る前で大胆だなぁ。


私は唖然。


きっと私たちの会話に聞き耳を立てていたに違いない。


ミケネコお父様もその子の態度に少しだけちっさいため息。


「新人の教育は難しいよ」


教育って言うより、あの子は根本的な何かが違う……


と思ったけれど私はその言葉を飲み込んだ。


「何飲む?朝都スペシャル?」


朝都スペシャル…ってこないだミケネコお父様が作ってくれたカクテルのことかな。


テキーラとシロップとイチゴの甘くて可愛いカクテル。


「今日はショットでください」


私が申し出ると、ミケネコお父様は目をぱちぱち。


「しょっぱなから飛ばすね~、大丈夫?」


「大丈夫です。あ、良かったらお父様も…」


私が薦めると


「じゃぁ、ありがたく~♪」と言ってお父様は二杯分のショットグラスにテキーラを注ぎいれた。


私が薦めた理由。



それはさっきの言葉に続く言葉を―――聞きたくなかったから。