「ま、座って座って~」


ミケネコお父様は立ち直りも早くにこにこ言ってカウンターのスツールを勧めてくれた。


店内を見渡すと、人はいつもよりまばらで閑散としている。


時間帯の問題だろう。もっと遅くなったら合コンの二次会連中やら、夜のデートカップルたちで店がにぎわう。


それを計算してか、カウンターに居るバーテンの子たちもいつもより少ない。


その子たちの誰も見知った顔はいなかった。


ニューフェイスだ。


「ベテランの子たちはピーク時に来てもらうことにしてるんだ~


あ、この子には僕が何か作るから君たちは他のお客様をよろしく」


ミケネコお父様は手際よく、カウンターに入っていた男女のバーテンに指示。


女の子の方はホントに二十歳を迎えたばかりの初々しい子で、


入った頃の私とどこか被る。


「このお客様店長のお知り合いですか?」


女の子はミケネコお父様を上目遣いで見上げ、


「ちょっとね。以前ここで働いてくれてた子なんだ」とミケネコお父様はその子に説明。


「ふぅん」


女の子は探るように私に目を向けてきて、私は唇を引き結んだ。



前言撤回。


私、こんな不躾な態度とったことなかったわ。


一瞬でライバル視されてたことがすぐに分かった。


この若い子は店長が好きなんだって。





「店長モテモテ?


ペルシャ砂糖さんに言いつけてやろ~」





ちょっと意地悪く笑ってやると、ミケネコお父様は笑ってかわすかと思ったのに…


「朝都ちゃん……昨日の…朝のことだけどさ…」


ミケネコお父様は真面目に私を見据えて、私は思わず目をまばたきさせた。