――――…次の日。


私はその日の講義を終えて、きっちり研究室に顔を出し


自分の研究をし終えても、まっすぐうちに帰る気になれなかった。


かと言ってマウスに24時間張り付いている気力も沸かず、


結局


「いらっしゃいませ~」


前のバイト先まで来てしまった。


出迎えてくれたのはミケネコお父様。今日もギャルソン風の制服がキマってる。


「朝都ちゃん……」


昨日の今日でキマヅイ…


酔っ払って迷惑掛けたうえ、盛大な勘違いでお父様を攻めちゃったから。


でも他に時間を潰せるところなんて思い浮かばなくて、




何となく……ここが私の“帰れる場所”な気がしたから来ちゃった。





「もしかして…強請に来た…?セクハラで訴える前に取るだけ取ろうってこと??」


お父様は苦笑いで、若干引き腰。


誰が元カレのお父様を強請にわざわざ来ますかっての。


てかそこまで金の亡者じゃないし。


「あれはセクハラの内に入りません。私もお父様にひどいこと言ったのでおあいこです。


お互い水に流しましょう」


大人ぶって言ってみたけど、私はお父様の放ったあの寝言が耳から離れない。





『紗依――――……』






お父様はまだ黒猫のお母さんサエさんのことを―――忘れられないのだろうか。


それとも忘れたくない?




どっちなんだろう。




私は肩に掛かった髪の先を手にとってそっと匂いをかいでみた。


私が使っているシャンプーの香りがして、それはみずみずしい華の香りだった。