「……やっぱ…夢…だった…」
きゅっと布団の端を握って俯くと
「夢…?何の夢見てたの?」
涼子はテーブルに乗せたお鍋の中をかき回ぜて、その中身を器に盛った。
その中身は
味噌汁―――…?
「しじみ汁作ったんだ、あんた好きでしょ?(お酒)飲んだあとに良く飲んでたじゃん?」
しじみ―――
「あ…うん」
私は曖昧に頷いて、涼子から手渡されたお椀を受け取った。
「食べれる?ちょっとでも食べないと良くならないよ?
しじみは栄養もあるし」
私の心情を知ってか知らずか涼子はマイペースに言って自分の分もよそっている。
まさか…
だってあれは夢だよ。
黒猫がここにくるわけないもん。
それでも少しの希望に縋りたくなる。
「あの…さっきここに―――」
「さっき…?」
涼子はきょとん。
「…こ、ここに居たのは涼子だけ?」
探るように聞くと
「やだぁ、私だけに決まってるじゃない。何、朝都…怖いこと言わないでよ。私幽霊とかダメなの」
涼子はぞっとしたように顔を青くさせて両腕を抱きしめる。
やっぱり
あれは夢だったんだ。
寝てる間にしじみ汁の匂いを嗅いで、夢と現実が混在してるだけだよ。
あとは希望とか……
はぁ
黒猫と別れても、風邪を引いても
バイオハザードウィルスが弱まることはなさそうだ。



