それは黒猫からしてみればホントにちっちゃな勇気かもしれないけど
私にとっては大きなことで。
元々不安だったものがさらに大きく膨れ上がり、さらに
“倭人ちゃんを取らないで”
なんて言われたら、もう立ってるだけでも足元から崩れ落ちそうだ。
今後、若い彼女たちの存在に怯えながら黒猫と一緒に過ごすのは
私には無理だよ。
私…いつからこんなに弱くなったんだろう。
たとえ彼氏の周りに魅力的な女性がいても気にならなかったのに、いえ…そりゃ少しは気にしたかもしれないけど
でもこんな風に苦しくなったり悲しくなったりすることはなかった。
倭人に
「守ってほしい」
とは言わない。
でも彼の手は可愛くて優しいお姫さま、カリンちゃんを守るために存在してるの。
あんな風に抱っこされてるカリンちゃん、私よりずっとずっと倭人の傍に居るのが似合う子。
「もう疲れた」
最後の言葉を締めくくるには最適な言葉だったと思う。
そう
疲れてたんだ。
『葵のことは分かったけど、疲れたなんて言うなよ。
二人で乗り越えていこうよ。それが恋人同士ってもんじゃないの?』
最後の最後まで倭人は優しい。
その言葉が嬉しいよ。
でも
決めたことなの。
「家庭教室の仕事の契約がまだ残ってるけど、明日にでもお父様に事情を話して辞めさせてもらうつもり。
無責任でごめん」
一方的に言って、私は通話を切った。
これ以上は無理だ。



