浩一は以前、私が感情的になることなんてあるのか、と疑問に思ってたらしいけど
私だってある。
悲しいこと、寂しいこと
泣きたくなるぐらい苦しいことだって
あるんだ。
『会ったっていつ?』
黒猫が虚をつかれたように幾分か声を上ずらせて聞いてきた。
図星だったからとぼけてるのだろうか。
それとも本当に知らないのだろうか。
どちらか分からない。
冷静に考えれば絶対に分かるはずなのに、でもその冷静な部分を私の涙が流していったせい。
それとも言い知れない怒りで蒸発してしまったのだろうか。
とにかく、黒猫に真意を聞いてからと言うステップを踏めずに私は思っていたことを吐き出した。
「昨日マンションの下でロシアン葵ちゃんと会ったの。
ご丁寧にも“倭人はお昼寝中”って教えてくれた」
『昨日…?てか俺、葵と会ってねぇし』
「じゃぁ何で葵ちゃんは倭人がお昼寝してたこと知ってたのよ」
『知らねぇよ、あいつとはそこそこ長く付き合ったし、俺の生活パターンを覚えてただけじゃないの?
てかそんなことあったのなら聞いてよ』
黒猫の声にまたも苛立ちが戻り、半分呆れの色が浮かんでる。
聞けないよ―――
だってあれこれ聞いたらウザがられるかもしれないし。
“年上の彼女、面倒くさい”とか思われるかもしれないし。
それでも勇気出して今日はマンションに行ったつもりなんだけどな…
カリンちゃんの予期せぬハプニングに、私の勇気がくじけた。



