こっちが近道で私もよく利用するんだけど。


二人分の足音がリズム良く道路に響いて、


さすがにそれが五分以上続くと気味悪いのか、カリンちゃんが後ろを気にしたように鞄をぎゅっと抱えて小走りになる。


ちょ、ちょっと待って…


私、不審者に思われてる!?


いや、違っ!



そう言いたくて慌てて追いかけると、カリンちゃんも足を速め


私だってそんなに足が速いほうじゃないけど、カリンちゃんは喘息だって持ってるし、彼女がちょっと走ったところで息を切らしてスピードが落ちた。


や…やっと追いついた。


「か、カリン…」


言いかけて手を伸ばそうとすると、


「キャーーー!!」


カリンちゃんは悲鳴をあげてバッグを振り回す。


そのスクールバッグの角が思い切り顎にぶつかり、


結構な威力だな!



ドタっ


私は派手な音を立てて、みっともなく後ろにひっくり返った。




青い空を見上げながら



はじめて知ったよ。


スクールバッグは立派な凶器だってことを。


これじゃ痴漢対策にもなるよね。



なんて思ってる場合じゃないって。




顎が痛いし、倒れたふしに打った背中やお尻もイタイ…


やっつけられる痴漢が私、って恥ずかしすぎるよ。


痛みに涙が滲んで視界がぼんやりと歪み、その端にカリンちゃんが心配そうに覗き込んではっとなった。






「あ、倭人ちゃんの……!」






そうです、私は痴漢でも変質者でもありません。