「予知夢??


朝都のごはん食いたいって願望か?」


いつの間にか取り返したタッパーを掲げて黒猫は首を捻る。


んなバカな。


とか思ったケド、ネコってどこか神秘的な生き物だしあながち予知夢も外れてないかも。


って…ちっがーーーう!


黒猫は人間の♂!



とりあえず、私が見たあのやらしい夢じゃなかったことだけ良かったか。


「ちゃんと話したから、弁当食わせろ」


黒猫は取り上げたタッパーの中のおかずに箸を走らせている。


手掴みで卵焼きを口に運びながら、





「夢ってさー、俺に会いたいって思ってくれてる人が出てくるんだって。


知ってた?センセー」




にやり、と口の端を吊り上げて黒猫がちょっと笑いながら卵焼きを口に放り入れる。




会いたい―――…





確かにそう思ったけど




「だったらあんたもそう思っててくれたんだ」




私も意地悪そうに笑みを返した。


私の夢にも黒猫が出てきたわけだし。


「何それ、どーゆう意味?」


「ふふっ♪なーいしょ♪」


ま、私が黒猫を襲ってたなんて口が裂けても言えないけどね。




…………




その奥で、




「倭人のヤツ…何喋ってんだ??」

「黒猫がどーのとかツナ缶がどうのとか言ってるぞ?」

「倭人、何喋ってンだよ!もっと色気のある話しろよ~!」

「あいつ…彼女の前でもアイツだな」



外野が煩い…


給水タンクの向こう側は男子高生たちで賑わっている。


そんなこと知らずにか、黒猫は偶然触れた私の指先を握って、


「朝都、指熱い…熱、ある?」


そう聞かれて私は首を横に振った。


熱なんてないし(…たぶん)私はいたって健康だ。


「手!繋いだぞ!!」

「倭人やる~♪」


「「……………」」


さすがに外野の賑わいに気づいたのか黒猫は私から手を慌てて離して顔を背ける。



「やっぱ屋上はマズかったな」


「そうみたいだね……」



恋人とラブラブ甘いランチタイム(?)…は、こうして終わった。