………ちょっと待って…


その夢と言うのは私が見たやらしー夢じゃ…


二人一緒の夢を見るなんてありえないことだけど、でもタイミング的に…


こんだけ想い合ってる(…と思いたい)し離れた場所でも同じ夢を見るなんて運命感じちゃう…


だけど


「ど、どんな夢…?」


恐る恐る聞くと、






「ひみつ」





黒猫はちょっとだけ顔を赤くして顔を逸らす。


へ!!?


ちょっと!何なのよ、その反応は!


まさか私が襲ってる夢じゃないわよね!


「何の夢!言いなさい。言わないとお弁当なし。


言うまでお弁当お預け」


私はタッパーを取り上げて黒猫を睨むと


「はぁ?そんなん脅迫じゃん」と黒猫は呆れ顔。


「どーせエッチな夢なんでしょう。トラネコくんのDVDでも見た??」


と、言いつつも運命論に期待している自分もいる。


だけど


「は?ちげぇし」


黒猫は不機嫌そうに目を細めてぶすりと遠くを見る。





「夢の中で俺は…


本当に小さな黒いネコで……」




黒猫は恥ずかしそうに顔をそらせると耳まで赤くした。



「俺は飼い主の朝都の膝に乗って


朝都が俺に話し聞かせてくれてるんだ、



魚の造りについてあれこれを。



ここの部位はどうたらこうたら、骨の作りはなんたらとか。


俺、退屈でしょーがなかった」



運命論破れたり。


私……私は黒猫の夢の中でも私だった。


でも


私が見たやらしー夢じゃなくて良かった。そのことにちょっとほっ。


「…て退屈言うな!」


「だって魚の造りを知るより食わせろって感じだし。


途中で飽きて朝都の手を引っかいてやった。


そしたら朝都はツナ缶くれた」


そ、そう。ちゃんとオチまであるのね。


てか黒猫の夢の中は夢でも食べることなのね。




私はちょっと想像した。


膝にちょこんと乗った黒いネコの背中をそっと撫でて


可愛がるその光景を―――




黒猫の夢は


夢でも可愛かった。