このメッセージを聞いたときに、胸が締め付けられる想いをした。
胃痛にも似た鈍い痛みが心臓を襲い、ぎゅっと苦しくなって息苦しくなる。
一方的に別れを告げた私を攻めるようなことはなく、黒猫はまだこんな私のことを好きで居てくれる。
「私も好きだよ」
何度もその一言を告げたくて衝動的に電話を掛けようとしたけれど、結局最後の最後になって通話ボタンを押す指は躊躇した。
大学の研究棟の裏に位置している広い庭のベンチに腰掛け、私は開いたケータイをじっと見つめていた。
ザワッ
風が大きく吹いて、目の前を黄金色の葉が舞う。
黒猫からのメッセージは何度も何度も聞いて、削除はしなかった。
正しくは“削除できなかった”だ。
黒猫の声を聞いては涙を流して、何度も何度も黒猫に電話を掛けそうになった。
『涙は枯れる』って言うけど、いつになったら
黒猫のことを思い出して、黒猫の声を聞いて悲しくならなくなる日が来るんだろう。
木々が紅葉から雪を積もらせた雪景色に変り、やがては桜が咲くころ…?
それを一体何度繰り返すのだろう。
何度―――……
ふわり
突如風に乗って、覚えのある香りが香ってきて、
「よ」
背後から聞きなれた声に呼ばれた。