なんでだろう。ほんとは行ってほしくないのに。


結局なんだかんだ言っても、楓くんは由良ちゃんのことが心配なんじゃないかって、そんな気がして。


「いや、クモなんてそんな害ないし、大丈夫だろ。貸して、俺も手伝う」


楓くんはそう言うと、私の手から容器を受け取ろうと手を伸ばす。


だけど私はその瞬間、思わずその手をパッと払いのけてしまった。


「い、いいからっ」


「えっ?」


「楓くんは、由良ちゃんのことを守ってあげてよ。私のことはもう、守ってくれなくても大丈夫だからっ……」


なんて、思ってもいない言葉が口から飛び出してくる。


「は? なんでそんなこと言うんだよ」


「だ、だって、由良ちゃん困ってるんでしょ。洗い物は、眞白くんに手伝ってもらうから、楓くんは私のことなんか気にしないで、早く……」