あれから5年。

俺は念願どおり、店をリニューアルして、小さなレストランをオープンさせ、店の評判も上々だった。

妻の茉子ちゃんは、結婚後も司書の仕事を続けていたが、

「ジローくんの夢に寄り添いたい」

と、オープン当時から、ただ一人のウェイトレスになってくれた。

両親の店の雰囲気をかなり変えてしまい、申し訳ないような気もしたけれど…若い頃から働きづめだった両親は、今は夫婦水入らずで旅行三昧だし、この店のことも気に入ってくれたようで安心した。

そして、俺の隣には…いつも最愛の妻が居てくれる。

出会った頃より、更に綺麗になったよな…なんて思いながら、今でも見とれてしまうことも多々あるのは、少し恥ずかしいから秘密だ。

両親の店がきっかけで二人が結ばれたように、この店が、恋人たちの思い出の店になったら…そう願っている。


「ジローくん、次のお客様のオーダーはね…」

ウェイトレス姿の、愛する妻が小声で言うので、俺は今日も心を込めて料理を作る。

にこやかに接客中の美しい愛妻を、厨房からチラッと見て、心から幸せを噛み締めた。


Fin