Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



商店街を通り抜けて、散策路を進んで現れた、突き当たり。

ささやかなイルミネーションが施された広場へやってくると、思わず感動のため息がこぼれる。



「きれい……」



ゆらり、ゆらりと揺れている広い水面。

その真っ暗な世界には、無数の灯りが浮かんでいる。

周りのイルミネーションと、遠くに見える街明かりと、その反射。

ここにやってくるまでに視界を横切っていった光を、全部、集めて取っておいたみたい。



「……ここ、よく来るの?」

「んー。最後に来たのは、もうだいぶ前だな」

「そうなんだ」



ロマンチックな眺めに見惚れながら、少し切なくなる。


……“前”は、誰と来たのかな。
なんて。

図々しくて、よくない方向に働きそうになる思考。

けれど──、



「女と来たのは、お前が初めて」



聞こえた言葉に、ピタリと固まる。

まるでわたしの頭の中を読んだみたいなタイミング。

動揺して見上げれば、楽しげに細められた目がわたしを待っていた。



「どんなイメージ持たれてんのかは、昨日でなんとなくわかったしな。教えとく」



念を押すように言われて、言葉に詰まる。


──嘘、だ。

こんなにかっこよくて、女の人に慣れている感じなんだもん。

信じられないよ。


心の中では、どうしてもそう思ってしまう。


あくまでこの場所には、っていう意味かもしれないし……。

他の場所でなら他の人とも……とかいう、屁理屈だって成立しちゃう。


つい浮かれてしまいそうになる自分に、捻くれた考えで言い聞かせる。……のと、同時に。

もしかしたら本当に、自分は特別なのかも、ともよぎった。

ほんの少しの、期待。


……ううん。
仮に騙されてるのだとしても、それでいいとさえ思う。


いい夢を見させてもらえているんだっていう自覚さえあれば、目を瞑ることも許される気がした。


わたしにそう認識しておいて欲しい、と思ってくれている事実が、ただ、嬉しい。



「わ、かった。……教えてくれて、ありがとう」



ぎこちなく頷けば、彼は満足したように口角を上げた。