Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「だってさ。帰る方向と手段を把握してなきゃ、道中で待ち伏せなんてできないだろ」

「あ……」



……そ、そっか……。


考えてみれば、なぎ高の人たちが声をかけてきたのは、わたしがちょうど自転車を降りていたときだった。


自転車通学だって知られていたから、上り坂で待ち伏せされてたのかな。

平坦な道なら、自転車に乗ったまま、声をかけられる暇もなく通り過ぎていただろうし……。


腑に落ちたわたしは、思わず隣の甲斐田くんを見上げる。


──すごい。

わたしは、そんな考えに全く至らなかったから。


本条くんが、付き添い役を甲斐田くんに頼んでくれた理由が、なんとなくわかった気がする。

視野が広い人がそばにいてくれるの、心強いな。


感心するわたしをよそに、甲斐田くんはなにやら、スマホでマップアプリを立ち上げていた。



「それに、ここは聡学の付近と違って、ギリ元東区だし」



とつけ加えて、



「あいつらが好き勝手やる場としては、ちょいリスクが高すぎるかな」



──どういうこと?


つい、そんな問いかけが飛び出しそうになる。

わたしはすんでのところで口をつぐんだ。


直感で、わたしにとっては“知る必要のないこと”なんじゃないかって、思い直したから。


だけど結果的に、不自然に黙り込む形になってしまって──。



「あーごめん。今のは平石さんには関係ないハナシ」



甲斐田くんは、そんなわたしの反応が面白かったみたい。

くすりと笑って、気を取り直すように咳払いをする。