Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「つけられてるのに気づいたのって、どのへん?」



最寄り駅に降り立ったとき、甲斐田くんがあたりに視線を巡らせながら、聞いてきた。

わたしたちは改札を出てすぐ隣にあるコンビニを通り過ぎ、左手に現れた細い階段を上っていく。



「もう少し歩くと、またコンビニがあって。そこから出て──出た、ときに」

「そのコンビニ、家から近い?」

「……ちょうど中間地点くらい、かな?」

「ふーん」



甲斐田くんはなにかを確かめるように、通ってきた道を振り返った。



「ここの人通り、いつもこんなもん?」

「うん……普段からあんまり、多くはないかも」

「じゃーそいつ、家までついてくつもりだった可能性が高いな。危害を加えようとしてたなら、ここで行動に移してもおかしくないってくらいの、人けのなさだし」


……確かに、そうかもしれない。

今歩いている道は、あの時間帯はじゅうぶん暗いし、人目も少ない。

コンビニの周りのほうが明るいし、人も多いくらい。


甲斐田くんの言う通り、わたしの家の場所を知ることが目的だったのなら……。

しばらくの間、後をつけるだけで、なにもしてこなかったのも納得がいく。


……気づかずにマンションに辿りついちゃわなくて、よかった。

後をつけられていることを知ったのが、ひとりきりのときじゃなくてよかった。


もしも……と最悪の事態を想像して、ぶるりと震えた。



「てことはやっぱ、なぎ高のやつらじゃなさそーだわ。家なんてとっくに知ってんだろうし」

「っ、え?」



さらりと告げられた内容は、驚かずにはいられないもので。

わかりやすく動揺したわたしを、甲斐田くんが横目で見てくる。