「それに、甲斐田が相手なら、周りの目を気にする必要もないよ。あいつ、女好きだから。甲斐田がどんな女子といようが、今さらいちいち気にするやつなんていないでしょ」

「……」



す、すごい言われようだ──。

思わず甲斐田くんのことを、気の毒に思ったけれど。


……確かに、甲斐田くんは女遊びが激しいほうだという話は、わたしも聞いたことがある。

実際に校内で女の子と一緒にいるところを見かけることも多い。


つまりはわたしも、そのうちのひとりに紛れ込めるってことなのかな。

本条くんの言う通り、本条くん自身のそばにいるよりは、周りへの影響も少ないかも……。



「……甲斐田くんに迷惑じゃないかな?」

「そこは気にしなくていい。頼んだのは俺だし」



きっぱりと言われてしまえば、遠慮するほうが失礼なんじゃないかという気になってくる。



「とりあえず、もう事情は伝えてあるから。俺の都合で勝手にごめん。話したこともないやつに、いきなり」



本条くんの言う事情、というのはきっと、わたしとなぎ高の人たちの間にどんなことがあったかってこと。

それを、甲斐田くんが知ったんだ。


本条くんがそうした理由を頭では理解できたし、ひとりにならないに越したことはないし。

ものすごくありがたいのだけど……。


少しだけ複雑かもしれない。

どう思われたんだろう、なんて考えちゃって、気まずい。



「まあ安心してよ。ああ見えて口は堅いし、面倒見もいいやつだから」

「……そうなの?」

「意外でしょ」



そう言って甲斐田くんのことを話しながら笑う本条くん。

わたしはそのこと自体に意外だ、と思った。