Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「おい」

「……」

「嘘はついてねぇ」



無視を決め込むわたしに向かって、ザッ、と軽く砂利を蹴ってくる。


なんて乱暴なんだ。

さらに怒ったフリをして、彼に背を向けて歩き出した。



「どこ行くんだよ」



後ろから、ゆっくりと足音が近づいてくる。



「帰んの?」

「……」

「なあ」



もちろん帰る気なんて、全くなかったのだけれど。

心なしか強まった響きに、主導権がわたしに移った気がして嬉しくなる。


……本条くん相手には、負けてばっかりだったから。

珍しい体験。


だけど……。



「逃げんな、って」



そろそろ、返事してあげないと可哀想かも……。

そう思い始めたとき、





「──みお」





追いかけてきたまっすぐな声が、……油断していたわたしを、背中からひと突きにした。