Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-




「この髪型似合ってんな」

「……あ、ありがとう……」

「今みたいに下ろしてるのも、可愛ーけど」



思わず耳を疑うようなセリフ。

お世辞だとわかっていても一気に身体が熱くなって、立ち尽くす。

彼は顔を伏せたまま、ちら、と上目遣いでこちらを見た。



「……お前、すぐ赤くなんのな」

「っ、そうなの。だから、あんまり見ないで……」



今更ごまかせないと判断して開き直ると、くすくすと笑声が飛んでくる。

わたしは不貞腐れながら、髪の毛の束を顔の前で交差させて隠れた。



「いーじゃん。可愛くて」

「よくないよ……」

「そーいう反応も、可愛い」

「……っうそ」

「嘘じゃねーよ。可愛い顔、もっと見せろ」

「〜〜っ。もうっ。わざとやってる、でしょっ」



いくらなんでも、とさすがにわかって、差し出されていたスマホを乱暴に受け取った。

翻弄されてばかりの自分が嫌になる。



「怒んなよ」



ちっとも反省している気配がない口調。


ささやかな反抗心でふいっと顔を背ければ、彼が顔を覗き込もうとしてきて。

それをさらに避けた。